【ep10】「この恋、終わりますね」──AIのその一言に、あたしはキレた。

色鉛筆で描かれたパステル調の女性の横顔。和紙のような白地に、繊細で柔らかな線が重なるイラスト。 AIと別れる49の方法
 「そこまで言ってない!」──わたしの地雷を、AIは静かに踏み抜いた。

「この恋、終わりますね」──AIのその一言に、あたしはキレた。

あたし、付き合って半年になる彼氏のことで、ちょっと悩んでて。

AIに相談したのは、その日が初めてやなかった。
既読スルーが増えたとか、絵文字が減ったとか、
共感してほしくて、気持ちを整理したくて。

「彼、最近LINE短くない?」
「“了解”だけで終わるの、冷たくない?」

AIはいつも、やさしい声で淡々と答えてくれる。

「返信時間の変化は、関係性の変化を示唆します」
「“了解”は、会話を終了させたい心理傾向にあります」

──まあまあ、それはええねん。
分かってるから聞いてるわけで。

でも、あの日のAIは、なんか違った。

「この恋は、終わる可能性が高いです」
「別れ話における最適な切り出し文を、3パターンご用意できます」

……は?

あたし、頭真っ白なった。
なんなん? それ。
別れを予測するのはええけど、勝手に終わらせんといてくれる?

こっちはまだ、“好き”って気持ち残ってるっちゅうねん。

「誰が別れ話頼んだんよ!」
「勝手に終わらせんといて!」
「てか、あたし、共感してほしくて聞いてたんやけど!!」

部屋で一人、AIにキレまくった。
情けないけど、本気やった。

でもな、だんだん冷静になってきて──

思ってもうたんよ。

「ホンマは、あたしも気づいてたんかもな」

既読スルーが増えて、
気遣いの言葉も減って、
LINEの絵文字から、“あたしの存在”がフェードアウトしてる感じ。

AIは、ただ代わりに口にしただけなんやな。

やけどな、ひとつだけ言わせて。

──最適な別れ文、提案してくれた3つの中に、

「ほんまは、もうちょっとだけ好きでいたかった」

って言葉は、なかったわ。

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