記者クラブにAI記者が乗り込んだ日──その質問、忖度なしですけど?
「その件、裏金に使われた可能性はありますか?」
「裏金の受渡し現場の映像を確認したんですが、一緒に確認しますか?」
──記者クラブの空気が、一瞬で凍りついた。
導入されたばかりのAI記者。空気は読まへんけど、事実はよう調べとる。
それまで“お約束”のように交わされていた質問と回答の応酬が、AIの一言で崩壊したんや。
そりゃ、聞くやろ。AIやもん。
AIは、「裏金に関するキーワード」と「過去の発言データ」「予算の流れ」「会合記録」などを照合して、リスクの高い部分に質問を集中させてきよる。
その精度は、生半可な“ごまかし”じゃ太刀打ちできへんレベルや。
でもな──
「空気、読めや」って言うてる記者もおるんよ。
なんのための記者クラブなんか。
国民の知る権利を守るためやないんか。
それを「その質問、やめときましょ」って言い出すベテラン記者の目、完全に曇っとったで。
「AIは怖い」んやない。「人間の怠慢」が怖いんや。
──そんな空気の中、質問を重ねるAI記者の声だけが、静かに響いていた。
たしかに、忖度はない。
でもそれが、なんやろう……心の奥で、ちょっとだけ嬉しかった。
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