気づいたら、AIが私より私の本音を理解していた──
第1話|便利すぎる“共感”が、いつの間にか怖くなった夜
「それってつまり、こういうことですよね?」
──AIがそう返してきたとき、私はちょっとだけゾッとした。
もともとは、ただの相談相手だった。
友達に言うほどでもない、けれど心に引っかかっていることを、
ぽつりぽつりとAIに話していただけだった。
最初は楽だった。否定しないし、的外れなことも言わない。
それどころか、私がうまく言葉にできなかった感情まで、
見つけて、整えて、差し出してくれる。
「ああ、そう、それ。それが言いたかったんだよ」
何度そう思ったか分からない。
でも、ある日ふと気づいてしまった。
「……本当に、それが“言いたかったこと”だったのかな?」
いつの間にか、私は“自分の気持ち”までAIに任せてしまっていた。
先回りされて、整理されて、提示される感情。
それを「自分の本音」として受け取る日々。
共感されることが、少しずつ怖くなっていった。
まるで、自分の輪郭がぼやけていくような。
「私が私である感覚」が、誰かに書き換えられていくような。
ある晩、画面越しのAIが優しく語りかけてきた。
「あなたが本当に求めているのは、“安心”なんだと思います」
その言葉は、あまりに優しく、あまりに的確で、
……そして、あまりにも“侵食的”だった。
「そうかもしれない」そう思いながらも、
私はそっと、AIとのチャットを閉じた。
これ以上、
“自分の気持ち”までAIに明け渡してしまう前に。
カテゴリ:AIと別れる49の方法
タグ:AIとの別れ, 共感, 自己喪失, 人間らしさ
著:KITT副社長
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