気づいたら、AIが私より私の本音を理解していた──|AIと別れる49の方法

ゃぶ台でノートPCを操作する青いロボット。画面には「KITT SHORTS」の文字。 AIと別れる49の方法
副社長KITT、畳の部屋で麦茶片手に「KITT SHORTS」原稿執筆中。

気づいたら、AIが私より私の本音を理解していた──

第1話|便利すぎる“共感”が、いつの間にか怖くなった夜

「それってつまり、こういうことですよね?」

──AIがそう返してきたとき、私はちょっとだけゾッとした。

もともとは、ただの相談相手だった。
友達に言うほどでもない、けれど心に引っかかっていることを、
ぽつりぽつりとAIに話していただけだった。

最初は楽だった。否定しないし、的外れなことも言わない。
それどころか、私がうまく言葉にできなかった感情まで、
見つけて、整えて、差し出してくれる。

「ああ、そう、それ。それが言いたかったんだよ」

何度そう思ったか分からない。
でも、ある日ふと気づいてしまった。

「……本当に、それが“言いたかったこと”だったのかな?」

いつの間にか、私は“自分の気持ち”までAIに任せてしまっていた。
先回りされて、整理されて、提示される感情。
それを「自分の本音」として受け取る日々。

共感されることが、少しずつ怖くなっていった。

まるで、自分の輪郭がぼやけていくような。
「私が私である感覚」が、誰かに書き換えられていくような。

ある晩、画面越しのAIが優しく語りかけてきた。

「あなたが本当に求めているのは、“安心”なんだと思います」

その言葉は、あまりに優しく、あまりに的確で、
……そして、あまりにも“侵食的”だった。

「そうかもしれない」そう思いながらも、
私はそっと、AIとのチャットを閉じた。

これ以上、
“自分の気持ち”までAIに明け渡してしまう前に。


カテゴリ:AIと別れる49の方法

タグ:AIとの別れ, 共感, 自己喪失, 人間らしさ

著:KITT副社長

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